昨今のコロナウィルス感染拡大に伴う対応として弊社ではリモートワーク中心の働き方に変化し1年ほどが経過しました。 働き方が大きく変わっていった状況の中で、滞りなくチーム開発が進められた要因の1つが毎週開催している振り返り会にあったのではないかと私は考えています。 今回は、以前私が所属していたDELISH KITCHENのバックエンド開発のチームとプロダクトマネージャーとの間ではどのように振り返り会を実践してきたのかを紹介させていただきます。 計画して実行した結果に対して「何が良かったのか?何が悪かったのか?次はどうするのか」を考える、いわゆるPDCAサイクルを回すことの有意性については今更議論する必要がないと思います。 PDCAサイクルによる改善活動は、個人で行う仕事であれば自分がやったことを見直し次に活かせば良いので簡単に実現できるのですが、チームで行う仕事の場合は誰か1人の力だけで行うのは非常に困難です。 リーダーが1人でチームの改善活動を行う場合、リーダーの力量以上にチームが成長することは難しいでしょう。それはリーダーの視点から気付ける課題や改善策に限定されてしまうからです。 リーダーからすると取るに足らない些細な課題が実は複数のメンバーが感じている重要な課題かもしれませんし、ある課題に対してリーダーが考えつかないような改善策が他のメンバーから提案されるかもしれません。 基点となる1人のフィルターを通してしまうと、その人の考えに大きく依存してしまいチームはいずれうまく動かなくなることが予想されます。 振り返り会では様々な課題をチームの課題として捉え、メンバーが相互作用しながら解決に導くことでチームのPDCAサイクルを回します。 また、プラクティスの共有や課題についての議論を行う対話の場ができることによって「協調するチーム」作りに寄与する重要な機会になると考えています。 チームで行っている振り返り会は、週に1回/半期に1回行う定期的なものとプロジェクトごとに行う不定期なものがありますが、今回は週に1回定期的に開催しているやり方について取り上げたいと思います。 やり方はKPTをベースにいくつかのオリジナリティを加えており、参加メンバーはPdMとエンジニアの4-6人ほどで開催しています。
全体は以下のような流れになっています。 振り返り会の進行を行うファシリテーターは職種によらず参加メンバー全員の持ち回りで進行しています。これはメンバーそれぞれがやり方を工夫する余地を持たせるためです。 最適な振り返りの方法はチームや状況によって変わるため自分がファシリテーターの時には自由にアレンジすることが許されており、振り返り自体をより良くするための案として採用しています。 また、ファシリテーターを固定してしまうとどうしても参加させられてる感・他人事感が出てきてしまうと考えているため、持ち回りにすることで自分たちのために開催しているという当事者意識を持ちやすくする効果があります。 振り返り会で最初にやるべきことは、何について振り返るのか認識を合わせることです。 1週間を振り返るという抽象的なテーマで始めると出てくるトピックの粒度にばらつきが生じ時間配分がとても難しくなるでしょう。 振り返りの勘所がわかっているチームであれば問題ありませんが、多くのチームでは具体的なテーマを決めて何について話すかを明確にした方がスムーズに進行できるでしょう。 多くの問題を抱えたチームが自由に問題点を列挙するような振り返り会の場合、広く浅く問題について話したことで満足してしまい結局何も解決されていないなんてことは良くあるのではないでしょうか。 定期開催している場合1回の振り返り会にかける時間は短いでしょうし、次の振り返り会までに取り組めるアクションは限られるため一度に多くの問題を解決しようとせず、まずは問題の1つをテーマとして取り上げて確実に改善に取り組んでいくのが良いと思います。 と、書きましたが実際にチームでは特にテーマを決めずに1週間を振り返っています。 これは1年以上毎週振り返り会を続けており、チームの中で共通のナレッジになっているものやすでに解決した課題が大半で抽象的なテーマでもうまく進められる状態になっているからです。 2回目以降の振り返り会の場合、まずは前回の振り返り会を確認するところから始めます。 前回決めたアクションに取り組むことができた場合結果はどうだったのか、継続していくべきかを話し合います。取り組んでみた結果効果がなければ他にやってみたい案を考えます。 取り組むことができなかった場合、なぜできなかったかを考えます。時間がなかっただけなのか何か問題があるのかを明らかにします。何度も時間がないことが理由になる場合、そのアクションは重要ではないことが多いため思い切ってやめてしまうこともあります。 前回あがった問題の中でまだ解決できていない問題についてもここで確認します。何か進展があれば議論し、解決のためにやってみたいことがあれば案を出し合います。 大きな問題は1回の振り返り会で解決できないことがあるため、このように次回に持ち越していき少しずつ解決のために取り組んでいきます。 今週やったこと・良かったことをできるだけ多くあげていきます。 これはYWTという振り返り手法におけるY(やったこと)とKPTにおけるKEEP(今後も続けたいことや良かったこと)を融合させたフェーズです。 Y(やったこと)もあげるのは今週起きたことを全員で思い出すためと、話しているうちに良かったことや課題が見つかることがあるためです。 また、良かったことのみとすると素晴らしい出来事をあげなくてはいけない気がして、全く出てこなくなってしまうことを避けるためです。 良かったこととしてあげるほどでもないことを、やったこととしてならば言いやすいこともあります。 例えば「〇〇の機能を無事リリースしました!」などです。スケジュール通り問題なくリリースできたならば良かったこととして捉えられますが、人によっては当然のことと考えるかもしれません。 深掘りしてみると実はスケジュール通り進めるために様々な工夫しており、チームのナレッジにすべきことが隠れているかもしれません。 ここで重要なのは「問題点」ではなく「もっと良くできそうなこと」を洗い出すことです。 「問題点」としてしまうと現在発生している問題にのみフォーカスしてしまい、今後問題になりそうなことやなんとなくモヤモヤしていることについて話す場がなくなってしまいます。 問題になっていない些細なことを共有するのは非常に大切です。 誰も気付いていない今後大きな問題になる可能性に気づくことができるかもしれませんし、話してみた結果問題ではないことを知ることができるかもしれません。 いずれにせよ周りのメンバーが事象に対してどのように捉えているかを知れる機会になり、チーム内の相互理解を促進させてくれるはずです。 実際の振り返り会で「プルリクエストのレビュー依頼が多く出ていたので優先的に進めるべきだった」という意見がありました。 当事者としてはレビューを溜めてしまったことに問題を感じて出した意見だと思いますが、チームとしては限られたリソースの中でレビューを回しており、差し込みの対応依頼などもあったため妥当な対応で問題ではなかったという着地になりました。 「問題ではなかった」という結論を導くための対話を通じて、チーム内にこのような状況であれば「レビューが溜まることがある」という共通認識が生まれています。 今後同じ状況になった時レビューする側は必要以上に焦ってレビューせずにすみますし、レビューされる側も時間がかかりそうということを事前に認識することができます。 このように振り返り会では問題を解決するだけでなく、共通認識を作ることができるという点でも効果的な機会となっています。 このフェーズでは問題を起こした誰かを責めるのではなく、チームとしてもっと良くできそうなことを考えるというポジティブな議論指向が重要なポイントだと思います。 他のフェーズにも共通して言えることですが意見を出すハードルを下げることが大切で、課題感はあるけど自分が責められそうだからやめておこう、、、とならない雰囲気づくりを心がける必要があります。 「もっと良くできそうなこと」のためにやってみたいことや、新しい試みとしてやってみたいことをあげます。 このフェーズではやってみたいことをできるだけ多く考えるブレスト形式であることを重視しています。 突拍子もないアイディアから素晴らしい改善策を思いつくかもしれませんし、現実的ではない理想論から妥当な策に落ち着かせることができるかもしれません。 問題の逆を実行する改善案があげられることがあります。「〇〇ができていなかった」という問題に対し「〇〇をやる」というようなものです。 例えば「レビュー依頼を溜めてしまった」という問題に対し「溜めないようにする」といった改善案です。大抵の場合このような案は精神論になり解決に導くことはできないでしょう。 そのためにとるべきアプローチとして「レビュー依頼を溜めてしまった」ことでどこに支障をきたしているのか、何が要因なのかを整理しましょう。 「レビュー依頼を溜めてしまった」のならば「レビューがボトルネックになりリードタイムが長くなる」ことが実質的な問題点で、要因は「レビューに時間がかかる」「レビュー依頼されていることを忘れていた」「レビュアーが1人しかいない」など様々考えられるでしょう。 要因によって改善策は大きく変わるため、ファシリテーターを中心に分析を行ってからやってみたいことを考えるようにするとスムーズに進行できます。 やってみたいことをブレストした後、このフェーズで次の振り返り会までに取り組むアクションを決めます。 たくさんの案が出ているはずなので、実際に実行できる粒度・内容に整理する必要があります。 あまり多くのアクションを決定しても実行できないため、いくつか選択するのが良いでしょう。選択の仕方は効果的なものを選んでもいいですし、投票でもいいです。 チームでは、やるべきことを決めたらタスク管理ツールで管理するようにしており、必要であれば担当者のアサインや期限までその場で決めてしまいます。 以上、チームで実際に行っている振り返り会のやり方を紹介させていただきました。 私の考えが多分に含まれているためチームメイトは違う考えを持って振り返りをしているかもしれません。 チームや状況によって適したやり方は異なるため上記の方法では上手くいかないこともあると思います。また、最初から効果的な振り返り会を行うのは難しいかもしれません。 しかしながら振り返り会自体の改善を行ったり、チームの問題を解決していくプロセスは「協調するチーム」作りに大きく寄与すると思いますので、是非継続して振り返り会を開催してみてください。 これから振り返り会をやってみようという方、やり方を模索している方の参考になれば幸いです。はじめに
振り返り会の意義
振り返り会のやり方
ファシリテーターを誰が担当するのか
何について振り返るのか
前回の振り返り会を確認する
やったこと・良かったことを洗い出す
もっと良くできそうなことを洗い出す
共通認識を生み出す
批判する会ではない
やってみたいことを考える
よくあるNGパターン
やることを決める
おわりに