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AI活用で気軽に勉強会を実施した話

はじめに

デリッシュキッチンでiOSアプリ開発を担当している池田です。近年のAI技術の進歩により、コーディングやデータ分析をはじめとする様々な業務での活用が進んでいます。今回、非エンジニアを含むチーム全体での勉強会において、AIを活用してレジュメを作成することで、効果的な学習体験を実現できました。

その取り組みと成果を共有します。

背景

私たちのチームでは毎週振り返りを行っており、その中で私が「ドメインモデルを意識できていないため、サーバーエンジニアとアプリエンジニア間のコミュニケーションコストが増加している」という課題を提起しました。

ドメインモデルはユビキタス言語の一部です。そのため、エンジニアだけでなくPdMやデザイナーも理解しておくべきだという結論に至りました。こうして、職種を超えてチーム全体での勉強会が実施されることとなりました。

従来の勉強会の課題

一般的な勉強会では、発表者が事前に資料を作成する必要があります。勉強会の準備のために業務時間を確保しなければならず、発表者にとって大きな負担となります。

また、資料の質が参加者の理解度に直結するため、内容や構成に細心の注意を払う必要があります。さらに参加者のスキルレベルに合わせた調整も求められます。このように、準備には多くの時間と労力が必要で、勉強会開催の大きなハードルとなっていました。

AIでレジュメ作成

自分が説明することの負担を考えると、問題提起はしたものの勉強会の実施には躊躇していました。しかし、PdMが1週間後に勉強会をセッティングしてくれただけでなく、AIを活用して詳細なレジュメまで作成してくれました。

このAI作成のレジュメがあったおかげで、私は資料作成や構成検討などの事前準備をほぼ行うことなく勉強会に臨むことができました。

実際に使用したレジュメの一部をご紹介します。

**ドメインモデル勉強会 レジュメ**
**構成**
1. はじめに
2. ドメインモデルとは何か?
3. ドメインモデルの主な構成要素
4. ドメインモデルの表現方法
5. ドメインモデル構築のヒント
6. 質疑応答・ディスカッション
7. まとめ・今後の進め方

--- 以下、一部項目の詳細内容を抜粋 ---

**2. ドメインモデルとは何か? (15分)**
* **ドメインモデルの定義と重要性:**
* **ドメインとは?**: ソフトウェアが対象とする業務領域や問題領域のこと。(例:ECサイトにおける商品管理、注文処理、顧客管理など)
* **ドメインモデルとは?**: そのドメインにおける重要な概念、ルール、関係性を表現したもの。単なるデータ構造ではなく、振る舞い(ビジネスロジック)も含む。
* **重要性**: 複雑な業務ロジックを整理し、関係者間の認識齟齬を防ぎ、変更に強いソフトウェアを構築するための基礎となる。
* **なぜドメインモデルが必要なのか?(メリット):**
* **コミュニケーションの円滑化**: 開発者、ビジネス担当者、顧客など、関係者全員が共通の言葉(ユビキタス言語)でドメインについて話せるようになる。
* **関心事の分離**: ドメイン固有のロジックを他の技術的な関心事(UI、DBアクセスなど)から分離することで、コードの見通しが良くなり、変更やテストが容易になる。
* **ビジネス価値の向上**: ドメインの本質的な課題解決に集中でき、ソフトウェアがビジネス要件を正確に反映しやすくなる。
* **再利用性の向上**: ドメインモデルは特定の技術に依存しにくいため、異なるコンテキストでの再利用が期待できる。
* **ドメイン駆動設計 (DDD) との関係(概要):**
* ドメインモデルは、ドメイン駆動設計 (DDD) というソフトウェア設計手法の中核となる概念であることに触れる。
* DDDは、複雑なドメインの問題を解決するために、ドメインモデルを中心に据えた設計アプローチであると簡単に紹介する。(深入りはしない)

このレジュメをもとに、勉強会は以下のような流れで進行しました。

勉強会の流れ

勉強会は以下のような役割分担で進行しました。

  • 説明役(私):レジュメに沿って実例を交えながら説明
  • ファシリテータ(PdM):進行管理と議論の促進
  • 参加者:質問や確認を通じて理解を深める(エンジニア、デザイナーを含む)

私はAIが作成したレジュメの各項目について、実際のプロジェクトでの具体例を挙げながら説明しました。レジュメがあることで、必要に応じて項目をスキップしたり詳しく掘り下げたりと、参加者の反応に合わせて柔軟に進行できました。参加者からは活発に質問や確認があり、双方向的な学習を実現できました。

所感

AIレジュメ活用のメリット

準備負担の大幅軽減

最大のメリットは、事前準備をほとんど必要とせず、負担なく実施できたことです。

適切なレベル設定の自動化

どの内容をどの程度のレベル感で話せば良いのかを考える必要がなく、私だけでなく参加者にとっても利点がありました。特に初学者にとっては、体系的に整理されたレジュメによって学習の道筋が明確になり、理解が深まりやすかったと感じます。

効果的な適用場面

実践経験はあるが体系化に不安があるトピック

例えば、アジャイル開発のメンバー経験はあるものの、全体像を説明する自信がない場合でも、AIレジュメにより体系的な知識を効果的に伝えることができます。

初学者を含む多様なレベルの参加者がいる場合

今回作成されたレジュメは基礎から応用まで体系的に構成されていたため、説明役は専門知識の整理に悩むことなく、参加者のレベルに合わせた実例の提供に集中できます。

議論重視の学習スタイルを採りたい場合

構成が事前に決まっているため、説明役は安心して議論の時間を多く取ることができ、建設的な意見交換が生まれやすくなります。

使い分けの重要性

もちろん、発表や資料作成が得意で自ら取り組みたい場合は、その方が熱意も伝わりやすいでしょう。しかし、発表が苦手だったり準備時間が確保できずに勉強会の開催を躊躇している場合は、このようなAI活用が有効な解決策になると感じました。

おわりに

今回は勉強会の負担軽減のためにAIを活用した事例を紹介しました。説明役の負担軽減だけでなく、参加者にとってもより意義のある学習体験を実現できました。

この手法は、特に「知識はあるが説明に自信がない」「準備時間が確保できない」といった課題を抱えている方に有効だと考えています。AIが提供する構造化されたレジュメをベースに、自分の経験談を織り交ぜることで、質の高い勉強会を実現できます。

もし勉強会の開催を検討されているなら、準備の負担を理由に諦める前に、AIを活用した新しいアプローチを試してみてはいかがでしょうか。