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株式会社エブリーのTech Blogです。

In-App Review APIの導入について

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はじめに

はじめまして。普段はMAMADAYSでiOSエンジニアをしている國吉です。

iOSエンジニアではありますが、アプリのストアレビュー改善企画も兼務で行っているため、時にはAndroidの実装を担当することもあります。

そこで今回は2020年8月頃にGoogleから提供されたIn-App Review APIをMAMADAYSのAndroidアプリに導入し、実際レビュー評価にどのような変化を及ぼしたのかをお話していきます。

In-App Review APIとは

アプリから離脱することなく、アプリのレビューを行うことができるAPIです。

APIレベルは21以上(Android5.0)がサポートされています。

developer.android.com

これまでの課題

ストアのレビュー評価はアプリのインストールに大きく関わってきます。

ただ、MAMADAYSではこれまで”独自ポップアップを実装し、Google Play Storeに遷移させレビューを行ってもらう”というフローだったため、レビューまで手間がかかってしまいユーザーの離脱が多かったです。

そのためレビュー評価4.0から全く上がらないのが課題でした。

導入してみた結果

In-App Review APIを導入し約8ヶ月程経過しましたが、徐々にレビュー評価の件数が上がってきています。

もちろんその8ヶ月間でアプリ自体に様々な機能を追加しており、利便性が向上していることも影響してると思いますが、アプリ内でレビュー完結できることがレビューという行為のハードルを下げています。

導入前と比較すると0.3程度上がり、レビュー評価は4.3~4.4程度にまで成長しました。 f:id:K-ryosuke:20210525153733p:plain

レビュー要求を表示するタイミング

レビュー要求は表示するタイミングが重要です。

MAMADAYSでは、ユーザーが何かを達成した時(例えば記事をお気に入りした。育児記録を登録した。など)に下記の公式リファレンスに記載されている事項を考慮しレビュー要求を表示しています。

  1. ユーザーがアプリやゲームを十分体験してから、アプリ内レビューのフローを開始してください
  2. ユーザーに過度にレビューを求めないでください
  3. 評価ボタンや評価カードを表示する前または表示中に質問をしないでください(「アプリを気に入りましたか?」といったユーザーの意見に関する質問など)

実装方法

In-App Review APIはPlay Core SDKの一部なので、gradleファイルにCoreライブラリ1.8.0以上を追加します。

dependencies {
    implementation 'com.google.android.play:core:1.8.2'
}

様々な画面でレビュー要求を表示したいので、In-App Review APIをリクエストして表示する処理を共通関数として作成していきます。

ただし、公式リファレンスにも注意書きされていますが勝手に表示されるViewのデザインやサイズ、背景色等のカスタマイズは一切行わないようにしてください。

import com.google.android.play.core.review.ReviewManagerFactory
...
fun showInAppReview(activity: Activity) {
    val manager = ReviewManagerFactory.create(activity)
    val request = manager.requestReviewFlow()
    request.addOnCompleteListener {
        if (it.isSuccessful) {
            manager.launchReviewFlow(activity, it.result)
        } else {
            // error
        }
    }
}

f:id:K-ryosuke:20210525153528p:plain

最後に

Googleから提供されているAPIのため実装が比較的簡単であり、レビュー評価の向上にも繋がるためまだ導入されていない方は是非導入してはいかがでしょうか。

ただ、In-App Review APIをリクエストした際、必ずレビュー要求が表示されるわけではないので、絶対にレビュー要求を表示したい画面は”独自のポップアップ”を表示するように切り分けて使っていくのもいいかもしれません。 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

UITableViewDiffableDataSourceを使ってクラッシュ率を改善しました

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はじめに

iOSでTableviewやCollectionViewを扱っていると、UIとデータとの間で不整合が起きた際に NSInternalInconsistencyException というエラーを吐いてアプリが落ちるというのはよくある話だと思います。

TableViewに関してはiOS13から UITableViewDiffableDataSource が追加され、Apple曰くこの問題を回避できるらしいので、DELISH KITCHENのiOSアプリで採用してみました。

導入方法

Hashable化

セクションやアイテムに対応するオブジェクトがHashableに適合している必要があります。 今回は対象となるオブジェクトがユニークなIDを既に持っていたので簡単でした。

/// TableViewの各セルに対応するオブジェクト
struct Item: Hashable {

    let id: Int
    ...

    /// 追加1
    static func == (lhs: MessageDetailRowItem, rhs: MessageDetailRowItem) -> Bool {
        return lhs.id == rhs.message.id
    }

    /// 追加2
    func hash(into hasher: inout Hasher) {
        hasher.combine(id)
    }
}

UITableViewDataSourceをUITableViewDiffableDataSourceに変更する

struct Section {
    let items: [Item]
}

このようなセクションがあると仮定して

class SomeClass: UITableViewDataSource {

    let sections: [Section]

    func numberOfSections(in tableView: UITableView) -> Int {
        return sections.count
    }

    func tableView(_ tableView: UITableView, numberOfRowsInSection section: Int) -> Int {
        return sections[section].items.count
    }

    func tableView(_ tableView: UITableView, cellForRowAt indexPath: IndexPath) -> UITableViewCell {
        /// cellをデキューして加工して返す処理
    }
}

というUITableViewDataSourceの実装があった場合の変更点を示します。

まず、Section をHashableに適合させます。

次に、UITableViewDataSourceの代わりにUITableViewDiffableDataSourceを使うように変更します。

class SomeClass {
    private var dataSource: UITableViewDiffableDataSource<Section, Item>?

    func setupDataSource(tableView: UITableView) {
        dataSource = UITableViewDiffableDataSource<Section, Item>(tableView: tableView, cellProvider: { [weak self] (tableView, indexPath, item) -> UITableViewCell? in
            /// func tableView(_ tableView: UITableView, cellForRowAt indexPath: IndexPath) -> UITableViewCellと一緒の内容
        }
    }

    func setupSnapshot() {
        var snapShot = NSDiffableDataSourceSnapshot<Section, Item>()
        let sections: [Section] = /// 省略
        snapShot.appendSections(sections)
        sections.forEach { snapShot.appendItems($0.items, toSection: $0) }
        dataSource.apply(snapShot)
    }
}

setupDataSourceはViewControllerのViewDidLoad、setupSnapshotsetupDataSourceより後でデータが取得できたタイミングで実行すれば良いと思います。

また、変更がある場合は現在のスナップショットをdataSourceから取得できるので、それに対して変更を加えて再度applyするだけで良いです。

performBatchUpdateなどの処理

dataSourceにapplyしたらTableViewにも反映されるので不要になります。

結果

日に数件エラーが出ていたのですが、0件になりました。

今回はTableViewに対しての改善でしたがCollectionViewにも同様のAPIが存在するので、そちらも改善していきたいと考えています。

参考

https://developer.apple.com/documentation/uikit/views_and_controls/collection_views/implementing_modern_collection_views

Appleが提供しているサンプルプロジェクトです。 2021年3月18日時点では WiFiSettingsViewControllerTableViewEditingViewController がUITableViewDiffableDataSourceを使っているので参考になると思います!

API Serverの新規開発時に導入してみて良かった事

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はじめに

DELISH KITCHEN開発部の福山です。 社内向けシステムとしてAPI Serverを新規に構築する機会がありました。新規開発にあたり導入してみて良かった事をいくつかご紹介したいと思います。

前提技術スタック

新規GitHubリポジトリを用意してREST APIをGoで実装する。Webフレームワークはechoを採用。インフラはAWS ECS、RDSを利用。ログ情報はfluentd経由でS3やTreasuredataに格納しています。SentryやDatadogによる監視も行っています。

pre-commit、CIでのLintチェック、パッケージをクリーンアーキテクチャ構成にする

pre-commit

『DELISH KITCHEN』のメインAPI Serverの方で途中から採用された内容とほぼ同じ内容となります。今回は実装初期段階でpre-commit を導入しました。 pre-commitを使えばローカルでのGit commit時に任意のスクリプトを実行出来ます。

以下の処理が行われる様に設定されています。

- go generate
- go vet
- gofmt
- goimports
- golint
- wire

主に実装内容の静的解析を行っておりcommit前にルールから外れたコードを発見し修正を促します。 その他go generate契機でmockファイルの作成や wire でDIコードの生成処理(*後述)を実行しています。

良かった事

コードレビュー時にレビュアーがコードフォーマットや生成ファイルの有無等の指摘をする必要が無くなり、仕様やバグのチェックに集中出来る様になりました。

CIでのLintチェック

自動テストは導入しているのですが、更に実装初期段階からGithub Actionsにて reviewdog/golangci-lint を導入しました。 golangci-lintには 様々なLinter が用意されておりプロジェクト状況に合わせて任意のLinterを利用出来ます。

今回の開発では以下のLintチェックを有効化しています。

- bodyclose
- deadcode
- depguard
- errcheck
- goconst
- gocritic
- gofmt
- goimports
- gosec
- gosimple
- govet
- ineffassign
- interfacer
- misspell
- nakedret
- noctx
- prealloc
- scopelint
- staticcheck
- structcheck
- typecheck
- unconvert
- unparam
- unused
- varcheck

pushした内容に指摘対象のコードが存在する時にGithub上で以下の様に表示してくれます。

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reviewdog/action-golangci-lint

良かった事

pre-commitと同じなのですがレビュアーに指摘される前に自動チェックが行われる為、コードレビュー時に仕様やバグのチェックに集中出来る様になりました。 具体的にはgosecでセキュリティ面での指定が有ったり、gosimpleでシンプルなコードの書き方に気付かされたりとコードの品質向上のきっかけとなります。 特に実装初期段階から導入した事によりほぼ全てのコードが随時チェックされている事になるので途中から採用するよりオススメです。

パッケージをクリーンアーキテクチャ構成にする

既存のシステムでMVC的な構成で苦労する場面が有りました。Goでdomain/model的なパッケージとデータの永続化処理は切り離したいと考え今回はクリーンアーキテクチャ構成で実装する事にしました。
(色々なクリーンアーキテクチャの詳細解釈が存在するのであくまで一例とお考え下さい。)

ざっくり過ぎる図解なのですが以下の様なパッケージ構成となっております。(→は依存方向)

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パッケージレイヤー構成の一例

最低限下記は意識しつつ、ルールに拘り過ぎて工数が掛かり過ぎない様に状況に応じて詳細実装を進めました。

- 依存方向を守る(domainは他に依存しない)
- 抽象に依存する(interfaceに依存する)

handlerパッケージから wire で生成されたコードでDependency Injectionされる構成となっております。 動作のポイントとしてはdomain/repositoryで定義されたinterfaceの詳細実装はinfrastructureに存在しており、注入された内容として実行される様になっています。 他にはWebフレームワークの固有処理もhandler内に閉じておりusecase以降には影響しない様になっています。

良かった事

  • テストの容易性

一般的に言われている事ですがテスタブルになりました。 MVC構成だと要件ロジックのユニットテストを書く時も依存するデータベース情報等を実際に用意する必要が有りました。しかし抽象に依存しつつパッケージレイヤーを切った事により、例えばusecaseでのユニットテスト時にパッケージ内で扱う永続化処理に対してmockを利用し任意の結果が返却出来る事になります。 従ってテスト対象パッケージ以外の状態に悩まされる事無く確認したい要件ロジックに集中してユニットテストを行う事が出来る様になりました。

  • ドメイン情報の認識が深まる

単一パッケージにほぼ全てのロジックを詰める様な形だと肥大したり処理の責務等は考えなくなってしまう可能性が高いのですが、 要件ロジックをどのパッケージレイヤーに書くべきかを個人的にもチーム内でも意識する様になりました。 実際にPRレビューの時にチームメンバーと議論する事が有り、結果として当初より見通しの良いコードになる事が有りました。 この部分は個々人の解釈の違いも有るので工数が膨らみ過ぎないバランスで進める様にしています。

まとめ

新規開発を行うタイミングで導入して良かった事としてpre-commitCIでのLintチェックパッケージをクリーンアーキテクチャ構成にするをご紹介しました。
工数面のバランスや未経験な技術要素を導入するリスクも有りますが開発工程初期に開発効率を向上させる仕組みを用意するメリットは大きいと考えています。 まだ開発は続きますので良い仕組みを活かして効率良くアウトプットしていきたいと思います。

Core Web Vitalsの計測環境を整える

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Core Web Vitalsの計測環境を整える

はじめに

現在、MAMADAYSのWebチームでは昨年発表されたCore Web Vitalsを中心としたパフォーマンス改善に注力しています。 今回はパフォーマンス改善でも重要な計測部分について、MAMADAYSではどのようにCore Web Vitalsのデータを定点観測する環境を整えているのかをご紹介したいと思います。

Core Web Vitalsとは

Core Web Vitalsとは、全てのサイトにおいて共通してユーザー体験をよくするために重要な、Google社が提唱するパフォーマンス指標のことです。本記事ではCore Web Vitalsの解説を目的としないため、詳細な説明は割愛しますが、Core Web VitalsにはLCP・FID・CLSという3つの具体的なパフォーマンス指標があり、将来的にはGoogle検索のランキング要因にも組み込まれると言われています。

Core Web Vitalsの指標
画像出典: https://web.dev/vitals/

LabデータとFieldデータ

パフォーマンス改善をする際に重要になってくるのがパフォーマンスの定点観測ですが、計測データは大きく分けて以下の2種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるので、両方をうまく使い分けながらサイトのパフォーマンス観測を行っていくことが大切になります。

  • Labデータ: Googleが開発するLighthouseなど特定の環境下で収集されたパフォーマンスデータのことです。特定の環境下で行うことにより再現可能なデータを提供でき、パフォーマンス観測もしやすいのがメリットですが、実際の利用者との実行環境の差異がある可能性があります。

  • Fieldデータ: 利用者の実際の環境下で収集されたパフォーマンスデータのことです。実際の利用環境のパフォーマンスが収集できることがメリットですが、収集するデータにはばらつきがあるためFieldデータに比べると観測がしにくいです。

参考: https://web.dev/how-to-measure-speed/#lab-data-vs-field-data

計測環境の検討

計測環境の検討にあたっては有料の計測サービスの SpeedCurve やNext.jsでVercelを使っていればNext.js製の Analytics も候補に出ると思います。ただ、MAMADAYSではBIツールとしてMetabase、分析データの保存先としてBigQueryを使っているのでうまく既存のアセットを生かした形でコストをかけずに実現する方法を模索していました。

Labデータの計測

Labデータの計測にあたっては、PageSpeed Insights API を利用してLabデータの収集を行っています。PageSpeed Insights はブラウザでサイトのパフォーマンスを確認できるツールとして便利ですが、APIも用意されており、簡単に同じデータを取得することができます。

// PageSpeed Insights APIのレスポンスの一部抜粋
{
  "lighthouseResult": {
    "audits": {
      "largest-contentful-paint": {
        "id": "largest-contentful-paint",
        "title": "Largest Contentful Paint",
        "description": "Largest Contentful Paint marks the time at which the largest text or image is painted. [Learn more](https://web.dev/lighthouse-largest-contentful-paint/)",
        "score": 0.92,
        "scoreDisplayMode": "numeric",
        "displayValue": "1.1 s",
        "numericValue": 1110
      },
      "total-blocking-time": {
        "id": "total-blocking-time",
        "title": "Total Blocking Time",
        "description": "Sum of all time periods between FCP and Time to Interactive, when task length exceeded 50ms, expressed in milliseconds. [Learn more](https://web.dev/lighthouse-total-blocking-time/).",
        "score": 0.97,
        "scoreDisplayMode": "numeric",
        "displayValue": "110 ms",
        "numericValue": 105
      },
      "cumulative-layout-shift": {
        "id": "cumulative-layout-shift",
        "title": "Cumulative Layout Shift",
        "description": "Cumulative Layout Shift measures the movement of visible elements within the viewport. [Learn more](https://web.dev/cls/).",
        "score": 1,
        "scoreDisplayMode": "numeric",
        "displayValue": "0",
        "details": {
          "items": [
            {
              "finalLayoutShiftTraceEventFound": true
            }
          ],
          "type": "debugdata"
        },
        "numericValue": 0.00018970055161544525
      }
    }
  }
}

注意点として公式でも記載されていますが、Lighthouseのように特定の環境下でユーザーなしにパフォーマンス計測をする場合にFIDは計測できません。したがって、LabデータでFIDの計測を行いたい場合は代替手段としてFIDと相関のあるTotal Blocking Time (TBT)を見るようにします。

MAMADAYSではこちらのAPIを利用して、複数ページを2時間おきにデータを収集し、BigQueryに転送しています。1回のみ特定のページを毎日計測する方法だとパフォーマンスデータとしてはあまりにも信憑性に欠けてしまうので複数のページで頻繁にデータを取得するようにしています。

Fieldデータの計測

パフォーマンス改善に取り組み始めた当初、前述したLabデータの観測のみを行っていました。ただ、Labデータのみだと実際の環境下でのパフォーマンスデータが観測できないことが課題としてあり、Fieldデータの計測方法を検討しました。

Next.jsとGoogle Analyticsを利用した計測基盤の構築

まずはWeb側のデータ収集方法ですが、MAMADAYSのWebではNext.jsを採用しており、Next.jsはバージョン9.4から標準機能としてCore Web Vitalsの計測を行えるようになったのでその機能を使って公式のガイドを参考に実装しました。また、収集したパフォーマンスログはすでに連携済みだったGoogle Analyticsのイベントとして保存することで継続してパフォーマンス推移を観測できる環境を作りました。

// pages/_app.js
// googleAnalyticsのイベントとしてパフォーマンスデータを保存
function performanceMetricsEvent({ id, name, label, value }) {
    const eventValue = Math.round(name === 'CLS' ? value * 1000 : value);
    window.gtag('event', name, {
        event_category: 'パフォーマンス',
        value: eventValue,
        event_label: id,
        non_interaction: true,
    })
}
// Next.jsの標準機能 reportWebVitalsを定義する
export function reportWebVitals(metrics) {
    performanceMetricsEvent(metrics);
}

参考: https://nextjs.org/docs/advanced-features/measuring-performance

直面した問題点

しかし数週間こちらの計測方法で検証していたところ、送っているイベントのラベルがページロードごとのユニークな値にしているため、ラベル数が上限に達してしまい他のイベントに影響を及ぼしてしまう問題がGoogle Analyticsのアラートから発覚しました。

Google Analyticsのアラート

その時点で対応するのであれば、全体の利用者の何割かに絞って計測をすることで上記の問題は解決できそうでしたが、今後利用者の増加を考慮して計測基盤の見直しを行いました。

計測方法の改善

計測基盤を見直すにあたって、MAMADAYSでは分析にBigQueryを使用しているためBigQueryへの転送を考えました。

また大量のパフォーマンスログのデータ転送をアプリケーションとは切り離して行うために、サーバー側はパフォーマンスのログ出力のみを行い、fluentdでBigQueryへのストリーミング挿入し、dailyでシャーディングテーブルを作るように変更しました。fluentdでは fluent-plugin-bigquery というgemを使うことによって簡単にfluentdでのBigQueryへのストリーミング挿入が実現できます。

ログの出力形式

{"id":"1618905791407-4433185739018","label":"web-vital","level":"INFO","name":"LCP","path":"/articles/999","time":"2021-04-20T08:03:11.870117321Z","type":"WEB_PERFORMANCE","value":"1500"}

fluentdでのinsert部分の設定

<label @web-performance-log>
  <filter **>
    @type grep
    <regexp>
      key $.parsed_log.type
      pattern ^WEB_PERFORMANCE$
    </regexp>
  </filter>
  <filter>
    @type record_transformer
    renew_record
    enable_ruby
    <record>
      id ${record["parsed_log"]["id"]}
      time ${record["parsed_log"]["time"]}
      label ${record["parsed_log"]["label"]}
      name ${record["parsed_log"]["name"]}
      path ${record["parsed_log"]["path"]}
      value ${record["parsed_log"]["value"]}
    </record>
  </filter>
  <match **>
    @type bigquery_insert
    auth_method json_key
    json_key /etc/secrets/google-credentials/fluentd-to-bq.json
    project "#{ENV['BQ_PROJECT']}"
    dataset "#{ENV['BQ_DATASET']}"
    table web_performance_%Y%m%d
    auto_create_table true
    <buffer time>
      @type file
      flush_interval 30s
      path /var/log/fluentd-buffers/bq-event.buffer
      timekey 1d
    </buffer>
    schema [
      {"name": "id", "type": "STRING"},
      {"name": "time", "type": "STRING"},
      {"name": "label", "type": "STRING"},
      {"name": "name", "type": "STRING"},
      {"name": "path", "type": "STRING"},
      {"name": "value", "type": "STRING"}
    ]
  </match>
</label>

この改善により、BigQueryのストリーミング挿入でコストが多少掛かってしまいましたが、他の分析への影響を与えずにFieldデータの継続的な観測を実現できました。また、Google Analyticsへのデータ保存時にはMetabaseというBIツールで計測結果が見れるようにBigQueryへのデータの加工と転送を自前で別途行う必要がありましたが、直接BigQueryに転送できたことでその手間も省ける結果となりました。

まとめ

今回はWebパフォーマンスの計測でCore Web Vitalsをどう計測しているのかについて話しました。パフォーマンス改善において、憶測ではなく現状のボトルネックなどを正しく理解して改善する上でもパフォーマンスの継続的な計測は重要になってくると思います。計測方法やGoogle Analyticsでの問題に関して同じような課題に直面されている方の参考になれば幸いです。

MAMADAYSのWEBチームではパフォーマンス改善に注力しており、改善結果も出ているので実施した改善内容についても今後お話していきたいと思います。

1年間毎週続けてきた振り返り会の紹介

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はじめに

昨今のコロナウィルス感染拡大に伴う対応として弊社ではリモートワーク中心の働き方に変化し1年ほどが経過しました。

働き方が大きく変わっていった状況の中で、滞りなくチーム開発が進められた要因の1つが毎週開催している振り返り会にあったのではないかと私は考えています。

今回は、以前私が所属していたDELISH KITCHENのバックエンド開発のチームとプロダクトマネージャーとの間ではどのように振り返り会を実践してきたのかを紹介させていただきます。

振り返り会の意義

計画して実行した結果に対して「何が良かったのか?何が悪かったのか?次はどうするのか」を考える、いわゆるPDCAサイクルを回すことの有意性については今更議論する必要がないと思います。

PDCAサイクルによる改善活動は、個人で行う仕事であれば自分がやったことを見直し次に活かせば良いので簡単に実現できるのですが、チームで行う仕事の場合は誰か1人の力だけで行うのは非常に困難です。

リーダーが1人でチームの改善活動を行う場合、リーダーの力量以上にチームが成長することは難しいでしょう。それはリーダーの視点から気付ける課題や改善策に限定されてしまうからです。

リーダーからすると取るに足らない些細な課題が実は複数のメンバーが感じている重要な課題かもしれませんし、ある課題に対してリーダーが考えつかないような改善策が他のメンバーから提案されるかもしれません。

基点となる1人のフィルターを通してしまうと、その人の考えに大きく依存してしまいチームはいずれうまく動かなくなることが予想されます。

振り返り会では様々な課題をチームの課題として捉え、メンバーが相互作用しながら解決に導くことでチームのPDCAサイクルを回します。

また、プラクティスの共有や課題についての議論を行う対話の場ができることによって「協調するチーム」作りに寄与する重要な機会になると考えています。

振り返り会のやり方

チームで行っている振り返り会は、週に1回/半期に1回行う定期的なものとプロジェクトごとに行う不定期なものがありますが、今回は週に1回定期的に開催しているやり方について取り上げたいと思います。

やり方はKPTをベースにいくつかのオリジナリティを加えており、参加メンバーはPdMとエンジニアの4-6人ほどで開催しています。 全体は以下のような流れになっています。

  1. 前回の振り返りを確認する
    1. 取り組んだアクションはどうだったのか
    2. 解決していない課題は何か
  2. やったこと・良かったことを洗い出す
  3. もっと良くできそうなことを洗い出す
  4. やってみたいことを洗い出す
  5. やることを決める

ファシリテーターを誰が担当するのか

振り返り会の進行を行うファシリテーターは職種によらず参加メンバー全員の持ち回りで進行しています。これはメンバーそれぞれがやり方を工夫する余地を持たせるためです。

最適な振り返りの方法はチームや状況によって変わるため自分がファシリテーターの時には自由にアレンジすることが許されており、振り返り自体をより良くするための案として採用しています。

また、ファシリテーターを固定してしまうとどうしても参加させられてる感・他人事感が出てきてしまうと考えているため、持ち回りにすることで自分たちのために開催しているという当事者意識を持ちやすくする効果があります。

何について振り返るのか

振り返り会で最初にやるべきことは、何について振り返るのか認識を合わせることです。

1週間を振り返るという抽象的なテーマで始めると出てくるトピックの粒度にばらつきが生じ時間配分がとても難しくなるでしょう。

振り返りの勘所がわかっているチームであれば問題ありませんが、多くのチームでは具体的なテーマを決めて何について話すかを明確にした方がスムーズに進行できるでしょう。

多くの問題を抱えたチームが自由に問題点を列挙するような振り返り会の場合、広く浅く問題について話したことで満足してしまい結局何も解決されていないなんてことは良くあるのではないでしょうか。

定期開催している場合1回の振り返り会にかける時間は短いでしょうし、次の振り返り会までに取り組めるアクションは限られるため一度に多くの問題を解決しようとせず、まずは問題の1つをテーマとして取り上げて確実に改善に取り組んでいくのが良いと思います。

と、書きましたが実際にチームでは特にテーマを決めずに1週間を振り返っています。

これは1年以上毎週振り返り会を続けており、チームの中で共通のナレッジになっているものやすでに解決した課題が大半で抽象的なテーマでもうまく進められる状態になっているからです。

前回の振り返り会を確認する

2回目以降の振り返り会の場合、まずは前回の振り返り会を確認するところから始めます。

前回決めたアクションに取り組むことができた場合結果はどうだったのか、継続していくべきかを話し合います。取り組んでみた結果効果がなければ他にやってみたい案を考えます。

取り組むことができなかった場合、なぜできなかったかを考えます。時間がなかっただけなのか何か問題があるのかを明らかにします。何度も時間がないことが理由になる場合、そのアクションは重要ではないことが多いため思い切ってやめてしまうこともあります。

前回あがった問題の中でまだ解決できていない問題についてもここで確認します。何か進展があれば議論し、解決のためにやってみたいことがあれば案を出し合います。

大きな問題は1回の振り返り会で解決できないことがあるため、このように次回に持ち越していき少しずつ解決のために取り組んでいきます。

やったこと・良かったことを洗い出す

今週やったこと・良かったことをできるだけ多くあげていきます。

これはYWTという振り返り手法におけるY(やったこと)とKPTにおけるKEEP(今後も続けたいことや良かったこと)を融合させたフェーズです。

Y(やったこと)もあげるのは今週起きたことを全員で思い出すためと、話しているうちに良かったことや課題が見つかることがあるためです。

また、良かったことのみとすると素晴らしい出来事をあげなくてはいけない気がして、全く出てこなくなってしまうことを避けるためです。

良かったこととしてあげるほどでもないことを、やったこととしてならば言いやすいこともあります。

例えば「〇〇の機能を無事リリースしました!」などです。スケジュール通り問題なくリリースできたならば良かったこととして捉えられますが、人によっては当然のことと考えるかもしれません。

深掘りしてみると実はスケジュール通り進めるために様々な工夫しており、チームのナレッジにすべきことが隠れているかもしれません。

もっと良くできそうなことを洗い出す

ここで重要なのは「問題点」ではなく「もっと良くできそうなこと」を洗い出すことです。

「問題点」としてしまうと現在発生している問題にのみフォーカスしてしまい、今後問題になりそうなことやなんとなくモヤモヤしていることについて話す場がなくなってしまいます。

問題になっていない些細なことを共有するのは非常に大切です。

誰も気付いていない今後大きな問題になる可能性に気づくことができるかもしれませんし、話してみた結果問題ではないことを知ることができるかもしれません。

いずれにせよ周りのメンバーが事象に対してどのように捉えているかを知れる機会になり、チーム内の相互理解を促進させてくれるはずです。

共通認識を生み出す

実際の振り返り会で「プルリクエストのレビュー依頼が多く出ていたので優先的に進めるべきだった」という意見がありました。

当事者としてはレビューを溜めてしまったことに問題を感じて出した意見だと思いますが、チームとしては限られたリソースの中でレビューを回しており、差し込みの対応依頼などもあったため妥当な対応で問題ではなかったという着地になりました。

「問題ではなかった」という結論を導くための対話を通じて、チーム内にこのような状況であれば「レビューが溜まることがある」という共通認識が生まれています。

今後同じ状況になった時レビューする側は必要以上に焦ってレビューせずにすみますし、レビューされる側も時間がかかりそうということを事前に認識することができます。

このように振り返り会では問題を解決するだけでなく、共通認識を作ることができるという点でも効果的な機会となっています。

批判する会ではない

このフェーズでは問題を起こした誰かを責めるのではなく、チームとしてもっと良くできそうなことを考えるというポジティブな議論指向が重要なポイントだと思います。

他のフェーズにも共通して言えることですが意見を出すハードルを下げることが大切で、課題感はあるけど自分が責められそうだからやめておこう、、、とならない雰囲気づくりを心がける必要があります。

やってみたいことを考える

「もっと良くできそうなこと」のためにやってみたいことや、新しい試みとしてやってみたいことをあげます。

このフェーズではやってみたいことをできるだけ多く考えるブレスト形式であることを重視しています。

突拍子もないアイディアから素晴らしい改善策を思いつくかもしれませんし、現実的ではない理想論から妥当な策に落ち着かせることができるかもしれません。

よくあるNGパターン

問題の逆を実行する改善案があげられることがあります。「〇〇ができていなかった」という問題に対し「〇〇をやる」というようなものです。

例えば「レビュー依頼を溜めてしまった」という問題に対し「溜めないようにする」といった改善案です。大抵の場合このような案は精神論になり解決に導くことはできないでしょう。

そのためにとるべきアプローチとして「レビュー依頼を溜めてしまった」ことでどこに支障をきたしているのか、何が要因なのかを整理しましょう。

「レビュー依頼を溜めてしまった」のならば「レビューがボトルネックになりリードタイムが長くなる」ことが実質的な問題点で、要因は「レビューに時間がかかる」「レビュー依頼されていることを忘れていた」「レビュアーが1人しかいない」など様々考えられるでしょう。

要因によって改善策は大きく変わるため、ファシリテーターを中心に分析を行ってからやってみたいことを考えるようにするとスムーズに進行できます。

やることを決める

やってみたいことをブレストした後、このフェーズで次の振り返り会までに取り組むアクションを決めます。

たくさんの案が出ているはずなので、実際に実行できる粒度・内容に整理する必要があります。

あまり多くのアクションを決定しても実行できないため、いくつか選択するのが良いでしょう。選択の仕方は効果的なものを選んでもいいですし、投票でもいいです。

チームでは、やるべきことを決めたらタスク管理ツールで管理するようにしており、必要であれば担当者のアサインや期限までその場で決めてしまいます。

おわりに

以上、チームで実際に行っている振り返り会のやり方を紹介させていただきました。

私の考えが多分に含まれているためチームメイトは違う考えを持って振り返りをしているかもしれません。

チームや状況によって適したやり方は異なるため上記の方法では上手くいかないこともあると思います。また、最初から効果的な振り返り会を行うのは難しいかもしれません。

しかしながら振り返り会自体の改善を行ったり、チームの問題を解決していくプロセスは「協調するチーム」作りに大きく寄与すると思いますので、是非継続して振り返り会を開催してみてください。

これから振り返り会をやってみようという方、やり方を模索している方の参考になれば幸いです。