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株式会社エブリーのTech Blogです。

人工知能学会(JSAI2025)に参加しました

はじめに

こんにちは。デリッシュキッチンでデータサイエンティストをしている古濵です。

2025年5月27日〜30日に開催された第39回人工知能学会全国大会(JSAI2025)に、プラチナスポンサーとして協賛いたしました。 今年は史上最多の参加者数を更新したようで、学会としての盛り上がりを肌で感じることができました。

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エブリーとしても人工知能学会への参加は今回が初めてでした。 本記事では、スポンサーブースでのエブリーのAIプロダクト開発に関する紹介や、聴講した講演等についてまとめていきたいと思います。

スポンサーブース

弊社のスポンサーブースでは「AIエージェントによるレシピ提案の開発と応用事例」というタイトルで、AIプロダクトであるデリッシュAIについて事例紹介を行いました。 多くの学生、大学教員、企業の方々と交流することができ、デリッシュキッチンがどのようなサービスなのかという基本的な部分から、デリッシュAIのプロダクトの詳細や今後の展望まで、幅広くお話しすることができました。

ブースでは、実際にデモ機を用いてデリッシュAIを体験していただきました。 中には、デリッシュキッチンを普段からご利用いただいている方や、現役の管理栄養士の方ともお話しする機会がありました。 デリッシュキッチンに「こういう機能があると良い」といった具体的なご要望も含めてお聞かせいただき、非常に有意義な時間を過ごすことができました。 お立ち寄りいただいた皆様、ありがとうございました。

聴講

人工知能学会では多くの講演やセッションが開催されており、個人的に聴講して特に印象に残ったものをご紹介したいと思います。

自ら話しかけるチャットボット実現のための話題選択RAGの提案

JSAI2025/Proposal of a Topic Selection RAG for Developing Proactive Chatbots

ユーザーがチャットボットとの会話を継続する意欲を維持することの課題に焦点を当てた研究です。 既存の受動的なチャットボットとは異なり、ユーザーの興味や知識に基づいて能動的に新しい話題を提供できるチャットボットを提案しています。

ユーザーの興味を刺激する未知の情報を効率的に取得するために、話題をテーマごとにデータ化し、話題選択が可能なRAGシステムを構築している点が非常に興味深く感じました。 デリッシュAIでも、ユーザーのクエリに対してレシピを提案するだけでなく、今日何を作るか決まっていないユーザーとコミュニケーションを取りながらレシピ提案を行えるようになれば良いなと考えており、この研究のアプローチは大変参考になりました。

大規模視覚言語モデルチューニングを用いた非構造ドキュメント画像向け情報抽出

JSAI2025/Information Extraction from Unstructured Document Images with Tuned Large-Scale Vision-Language Model

非構造化文書画像に対する情報抽出手法について、複数のアプローチを比較検討した研究です。 OCR+LLMによる手法では、レイアウト要素が欠落してしまうため、視覚情報も考慮できるLVLM(Large Vision Language Model)を用いた比較検討を行っています。

具体的には、「LVLMによる手法におけるFew-shotとFine-tuningの比較」と「OCRの活用有無による比較」を実施していました。 結果として、LVLMをFine-tuningした手法が最も優れており、OCRを使用しない方が良い結果となったことは興味深い知見でした。 LVLMについては、別の講演で「大規模視覚言語モデルの開発」のチュートリアルも開催されており、画像とテキストの情報を統合的に処理できるLVLMの技術的発展を実感することができました。

LLMエージェントによるエルファロル・バー問題の解析

JSAI2025/Analysis of the El Farol Bar Problem by LLM Agents

エルファロル・バー問題は、バーに行きたがっている複数の人が同時に意思決定を行う状況を想定した、ゲーム理論における問題です。 この発表では、各エージェントがLLMによって発話・記憶・行動を生成することで、エルファロル・バー問題をシミュレーションし、その結果を解析した研究について紹介されていました。

ゲーム理論の問題をLLMでシミュレーションするというアプローチが研究として非常に興味深く感じました。 シミュレーション結果では、エージェントがバーに入る前に何人かで集合したり、発話内にハッシュタグが出現してエージェントのグループ内で情報が拡散されたりするなど、個人的には予想外な行動パターンが観察され驚きました。 集団インタラクションを通じて個性を分化させるという、ある種の社会的な振る舞いが、エージェントによって実現可能であることを示唆する結果は、大変興味深いものでした。

おわりに

今回、人工知能学会(JSAI2025)にプラチナスポンサーとして参加し、エブリーのAIプロダクトであるデリッシュAIについて多くの方々にご紹介することができました。 学生から研究者、企業の方々まで幅広い層の皆様と交流でき、デリッシュキッチンやデリッシュAIに対する貴重なフィードバックをいただくことができました。

個人的には、学生時代がコロナ禍だったこともあり、学会の雰囲気と盛り上がりを直接体感することができて非常に良い経験となりました。 聴講した研究発表から得られた知見を、今後のプロダクト開発にどのように応用できるか模索していきたいと思います。

最後に、学会でお話しいただいた皆様、運営スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。 来年の人工知能学会にも、さらに発展したプロダクトとともに参加できることを楽しみにしています。